Apple Watchは圧倒的なシェアで世界のスマートウォッチ市場をリードしています。
『Statista』社のレポート(*1)によると、2018年から2023年までのすべての四半期でアップル製品は出荷量でトップの座を他社のブランドに一度も譲ったことがありません。
*1. Quarterly smartwatch unit shipment share worldwide from 2018 to 2023, by vendor https://www.statista.com/statistics/910862/worldwide-smartwatch-shipment-market-share/
シェア率は時期によって上下していますが、それでも世界中のスマートウォッチのうち3分の1から4分の1くらいまではアップル製品だと言えるでしょう。
ところが、利用者をランナーに限ると、Garminの製品を利用する人の割合が非常に大きくなります。
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私もそうしたランナーのひとりです。
『Smart Watch Life』編集部に貸与してもらっているApple Watch Ultraの他に、上の記事で紹介したモデルとほぼ同じ時期(2016年8月)に販売開始された「Garmin Forerunner 35」を個人で所有しているのです。
ターゲットとしている利用者も目的も大きく異なることを承知の上で、この2つの製品をランナーからの視線で比較してみました。
シンプルかつ必要十分なGarmin Forerunner 35
左:Apple Watch Ultra、右:Garmin Forerunner 35
上の写真で分かる通り、Garmin Forerunner 35は非常にシンプルな外見です。白黒のスクリーンはサイズも小さく、カラフルなApple Watch Ultraのそれと比較すると、その違いは際立って見えます。
しかし、この優秀なランニングウォッチはランナーが必要とする機能はほぼ揃えています。そしてランナーにとって無駄なものは一切ついていません。
Garmin Forerunner 35の主な機能:
●GPSによる地点、距離、スピードの計測
●心拍数計測
●歩数、消費カロリー、運動時間を1日単位で集計
●ランニング・アプリ『Garmin Connect』へのデータ連携
走っている最中は経過時間と走行距離、そしてペースを確認できる。走った後はスプリットごとの心拍数や歩数も把握できる。アプリでランニング仲間とデータを共有することもできる。
これ以上何が必要だろうか?と考え込んでしまうランナーがいることは容易に想像がつきます。
もちろん、Apple Watch Ultraにできて、Garmin Forerunner 35にはできないことは無数にあります。
そもそも前者は「スマート」ウォッチの最上位モデルであり、後者は8年前の「ランニング」ウォッチなのですから、当然と言えば当然です。
価格も大きく異なります。
Apple Watch Ultraは12万円以上します。Garmin Forerunner 35はもう生産していませんので中古品を買うしかありませんが、大体2~3万円程度で取引されているようです。ちなみに私は2020年に約1万2000円で手に入れました。
Apple WatchシリーズはiPhoneと連携することが前提になっていて、その多種多様な機能を活用できます。
一方のGarmin Forerunner 35では電話はできませんし、メールの送受信もできませんし、ナビゲーション機能もありませし、電子マネー決済もできません。
Garminがそうだというわけではなく、そうしたスマート機能を備えた上位モデルもあります。あくまでもForerunner 35がランニングに特化したモデルだというわけです。
Apple Watch Ultra とGarmin Forerunner 35を同時着用して走るとどうなる?
左:Apple Watch Ultra、右:Garmin Forerunner 35
同じ条件で使い勝手を比較するために、Apple Watch Ultra とGarmin Forerunner 35を同時に着用して走ってみました。
ウォームアップを兼ねて陸上競技場まで2キロほどジョギング、40mダッシュを10本、そしてまたクールダウンにゆっくりとしたジョギングで帰ってくるというコースです。
Apple Watch Ultraはタッチスクリーン、Garmin Forerunner 35はボタンで操作するという違いはあるものの、走り始めるとき、そして走り終えたときに行う処理はほぼ同じです。
どちらも「これから走りますよ」あるいは「走り終えました」という意思表示を行います。途中でなんらかの理由で休止したときには「一時停止」と「再開」ができるという点も同じです。
走っている最中の情報量や画面の見やすさを比較すると、Apple Watch Ultraに軍配が上がります。とくにペースを上げて走るときは、私にはGarmin Forerunner 35に表示される文字や数字を目視することはできません。
その一方で、Apple Watch Ultraにはスマートであるがうえでの便利さと不便さが共存していると感じたこともいくつかありました。
まず、陸上競技場に到着した途端、Apple Watch Ultraが走るレーンを指定するかどうかを訊ねてきました。1周400mの陸上トラックを走る際に正確な距離とラップを記録するための機能です。
実験を行った地元高校の陸上競技場兼アメフトフィールド
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ただし、この日の私はトラック走ではなく、内部のフィールドで直線の短距離ダッシュを行う予定でしたので、その機能を使うことはありませんでした。
短距離ダッシュを始める前、ジョギングで上がった息を整えながら、簡単なストレッチで関節をほぐしていると、今度は「ワークアウトを終了しましたか?」とApple Watch Ultraが訊ねてきました。
はっきり言って、余計なお世話です。私はただ休んでいたわけではなく、ハードなトレーニングをする前に心身の準備をしていたのですから。
いざ短距離ダッシュを始めると、静止した状態から急激に動いたせいでしょうか、「転倒しましたか?」とやはりApple Watch Ultraに訊ねられました。
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もし私が本当に転倒していて、そして気を失っていたとすれば、Apple Watchが救急車を自動で呼んでくれたのかもしれません。
実際にそうした局面で人命救助に役立ったケースも数多く報告されています。
ただ、今回の私に関しては、Apple Watch Ultraからのいずれの問いかけにも「No, No, No」と汗だらけの指で画面操作をする羽目になりました。
率直な感想を飾りのない言葉で述べるなら「面倒くさいなあ」と思いました。
そのすべての間、Garmin Forerunner 35は何事もなかったように黙々と時間を刻んでいたことは言うまでもありません。休もうが転ぼうが、時計を停めるためには自分で意思表示をしなくてはならないのです。
ランナーたちが集まるオンライン・コミュニティで次のような画像を見たことがあります。
あるランナーが路上に倒れていて、意識不明になっているようです。その周りを数人が心配そうに取り囲んでいます。
「彼は大丈夫か?」
「分からない。でもさっきからGarminを一時停止してくれって言っているみたいだよ」
走った後のデータを比較すると
左2枚:Apple Watch Ultraのデータ、右2枚:Garmin Forerunner 35のデータ
ランニングを終了した後のデータはどちらもiPhoneで確認できます。Apple Watch Ultraで取得したデータは「Fitness」アプリに自動で送信され、Garmin Forerunner 35のデータは「Garmin Connect」アプリにシンクロさせるステップがあります。
サマリーのページはどちらもほぼ同じ内容です。距離や時間が微妙に異なるのは、操作をしたタイミングによるものでしょう。公式競技ならば話は別ですが、一般の人が自分のデータを見る場合には誤差の範囲だと言えると思います。
データをさらに詳細に見ていくと、Apple Watch Ultraの方がよりランニングに専門的な指標(パワー、ピッチ、歩幅、接地時間、上下動など)を提供してくれます。
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競技ランナーならこうした指標を活用することはとても有意義です。しかし、実際にどれだけのランナーがそれらを必要としているかはまた別の話です。
私のような一般ランナーなら、ことランニングに関してはGarmin Forerunner 35で十分以上に用は足りるのではないだろうか。そう思いました。
もっともGarmin Forerunner 35はランニングをしない人にはほとんど価値がない製品でもあります。
日常生活のあらゆる局面で大いに役立つApple Watchと単純に比較はできないでしょう。
●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookはhttps://www.facebook.com/WriterKakutani
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