11月4日にカリフォルニア州中央部のSan Luis Obispoで行われたスパルタン・レースのウルトラ部門(50キロ、60障害物)に参加してきました。
https://race.spartan.com/en/race/ultra
スパルタン・レースはOCR(Obstacle Course Race、障害物レース)と呼ばれるジャンルでは最大手のシリーズです。
壁を乗り越えたり、匍匐前進で泥だらけになったり、大きな石や砂袋を意味もなく持ち上げて歩いたり、いくつもの障害物をクリアしながら走る長距離走のことです。
そんなことをして一体何が楽しいの?と思う人も多いでしょうが、とにかく世界中で人気があるのです。
スパルタン・レースは日本でもイベントを行っていますが、これまでの最長レースはハーフマラソンの距離(約21キロ、ビースト部門)です。
つまり、私が今回挑戦した50キロ(ウルトラ)は未だに日本で行われたことがありません。
牛や馬がアホな人間たちを笑っている、かもしれない
コースに隣接していた牧場入り口
カリフォルニア地元民以外ではSan Luis Obispoという地名もあまり聞いたことがないかもしれません。
ロサンゼルスとサンフランシスコのちょうど中間あたりにある小さな町です。どちらからも車で3~4時間くらいかかります。
このあたりは名だたる酪農・農業地帯で、見渡す限りの牧場やワイン畑が広がっています。
レースはその牧場のひとつで行われました。草原の中を普段はトラックが走っているのだろうと思われるダート道路が主なコースです。
牛や馬の巨大なフンがあちこちに落ちています。酔狂なレースに参加する人間たちはそれをよけながら走るわけです。
障害物レースでスマートウォッチ使用率が低いわけ
やってやるぜと気合を入れる筆者。左手首にはApple Watchとタイム計測チップを装着
私は今回もApple Watchを使用しました。50キロと言う長丁場。ペースや距離の確認をしたかったからです。
しかし、他のランナーたちを見ると、意外にランニングウォッチやスマートウォッチを手首に巻いていた人は少ないようでした。
走り始めると、そのわけはすぐに分かってきました。Apple Watchのワークアウトには「障害物レース」の選択肢はありませんので、私はやむなく「屋外ランニング」を選びました。
ところが、平均して1キロに1個以上の障害物が出てくるわけですので、当然のことながら頻繁に足を止めることになります。ペースを始めとして、ランニングに関するデータはあまり意味がないのです。
障害物によっては、飛び跳ねたり、よじ登ったり、といったかなり激しい動きをしますし、匍匐前進では泥だらけにもなります。高価な腕時計が壊れることを心配する人もいるのかもしれません。
それ以上に私を悩ましたのはApple Watchの転倒検知機能です。ユーザーが転倒、あるいは何かに衝突したことを検知し、ユーザーに救助を要請するかどうかを訊ねる。一定時間内にユーザーからの反応がない場合は自動で緊急通報サービスに連絡するというものです。
実際の人命救命に役立ったケースもある、とても素晴らしい機能なのですが、元々激しい動作をすることが前提の障害物レースではオフにしておくべきでした。
なんども「あなたは転倒しましたか?」のメッセージが表示され、そのたびに「キャンセル」をタップする羽目になりました。
となりで匍匐前進していた人に、同じことを言われて、からかわれたことさえあります。
関連記事:Apple Watchと iPhoneの緊急通報サービス、誤作動が救助活動の妨げになる恐れ
スタート後9時間で切れたバッテリー
iPhoneに残されたデータ
それでもApple Watchを着用するべきではなかったとは思いません。
結果として壊れることはありませんでしたし、私にとって最も有難かったのは心拍数をリアルタイムで把握できたことです。
タイムや順位を気にするレベルではありませんが、とにかく完走だけはしたかった。体力を使い果たさないようにと、心拍数を一定以下に維持することを心がけました。
しかしながら、まことに残念なことながら、Apple Watchはゴールまで私を支えてはくれませんでした。
スタート後9時間ほど経過した頃、距離で言えば43キロあたりで、あえなくバッテリーが切れてしまったのです。
以前100キロのウルトラマラソンを走ったときは10時間ほどでバッテリーが切れました。
今回のバッテリー持続時間がそのときより1時間ほど短くなったのは、頻繁に転倒検知メッセージのやり取りがあったためではないか。何の証拠もありませんが、私はそんな風に考えています。
関連記事:【100km走って検証】低電力モードのApple Watch、沖縄100Kウルトラマラソンの完走まで持つのか?
誤解のないように書いておきますが、Apple Watchがスパルタン・レースのウルトラ部門に不足しているというわけではありません。
私のタイム、約10時間は順位で言えば後ろから数えた方がはるかに早く、トップクラスの人たちはその半分くらいでゴールしているのです。
そんなわけで、今回も「Apple Watchのデータでは途中リタイヤしたことになっているけど、本当に完走したんだよ」の証拠写真をお見せしなくてはいけません。
次回挑戦するときは「Apple Watchは最後まで私を力づけてくれました。どうもありがとう」と終わりたいところです。
左側が完走者Tシャツとメダル。右側がウルトラ部門参加者を示すベスト
●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookは https://www.facebook.com/WriterKakutani