16歳でデビューして以来、数多くの栄光とそれと同じくらいのトラブルに見舞われたことで知られるブリトニー・スピアーズが2020年にリリースした「Mood Ring」(ムードリング)。
揺れ動く感情と、それに気がついてほしいと願う気持ちが込められた曲です。
ムードリングとは指の温度によって色が変わる石が着いた指輪のこと。
指の温度は自律神経に大きな影響を受けることから、着用者はその色の変化によって自身の精神状態を知ることができる(あるいは他人に見せることができる)ということです。
このムードリングの機能をスマートな新技術に置き換え、ユーザーのメンタルヘルス向上に役立てる指輪型トラッカーがまもなく登場する模様です。
皮膚の電流反応に表れる精神状態
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米国のスタートアップ企業「Happy Health」が現在ユーザーと出資者を募集している新製品『Happy Ring』は皮膚の電流反応(electrodermal activity , EDA)を測定するセンサーと人工知能(AI)を組み合わせた新技術によってユーザーの精神状態を可視化します。そしてストレスが高まった状態になると警告する機能も備えています。
Happy Health社公式ホームページ:https://www.gethappy.com/
精神的なストレスは人の身体に様々な反応を引き起こします。心拍数の変化もそのひとつですが、EDAはとくに交感神経系の変化を把握できるのだそうです。
EDAセンサーはごく少量の汗から電気反応を測定し、それをAIのアルゴリズムによって、ユーザーごとの精神状態(ムード)を判定します。自分の気持ちが落ち着いているのか、あるいはイライラしたり、焦っていたりするのか、自分自身でもよく分からないときがありますが、それを知ることでストレスレベルの管理がしやすくなるでしょう。
メンタルヘルスは目に見えないだけに、気がつかないうちに悪化してしまうこともあります。それを予防することができれば、大事に至らないで済む人もいるかもしれません。
先行するフィットネス・トラッカーとの違い
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EDAセンサーを搭載したフィットネス・トラッカーは他にもあります。例えばFitbit Senseもそうです。しかし、EDAを測定するためには時計を手首から外し、手のひらに乗せなくてはいけません。
Happy Ringの特長は指輪型であるために、指の電気反応を常時測定できるということです。余分な着脱の手間がないので、ユーザーにとっても便利です。
指輪型のフィットネス・トラッカーはOura Ringを始めとしていくつかありますが、それらのほとんどが心拍数、身体的活動、あるいは睡眠の測定に重きを置き、精神状態はそこから類推する仕組みです。一方、Happy Ringは最初からユーザーの精神状態に焦点を当てています。
サブスクリプション型サービス
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Happy Healthは現在ユーザーの予約を受け付けています。実際の指輪がユーザーの手元に届く時期は未定です。Oura RingやWhoopと同じように、サブスクリプション型のビジネスモデルを取っています。Happy Ringのハードウェアに購入費用は発生せず、ユーザーは利用料金のみを支払う仕組みです。
気になる料金は月額30ドル(約4,100円)、1年分を一括で支払うと月々24ドル(約3,200円)、2年分なら月々20ドル(約2,700円)ということです。これが高いと思うか、安いと思うかは、人それぞれなのでしょうね。
●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookは https://www.facebook.com/WriterKakutani
photo source:Happy Ring – A wearable for your mind.