3月25日にロイター通信が報じたところ(*1)によると、米国のアップル社はApple Payのロシア国内最大のカード決済システムMir Cardを介した利用を停止しました。Mirを運営するロシア貯蓄銀行(ズベルバンク)が認めたものです。アップル社はこの件につき、公的なコメントを発表していません。
厳しさを増す米国の対ロシア経済制裁措置
『Counterpoint Research』社のレポート(*2)によると、ロシア国内のスマートフォン市場でiPhoneのシェアはおよそ15%を占めます。昨年だけでおよそ3200万個のiPhoneが販売されたということです。Apple Payのサービスも2016年からロシア国内で開始されていました。
ところが、2月24日にロシアのウクライナへの侵攻が始まった僅か1週間後には、アップル社はロシアでの全製品販売と輸出を中止しました。それに伴い、クレジットカード大手のビザとマスターカードを介してのApple Pay利用もできなくなりました。その数日後にはビザとマスターカードそのものの決済も停止されました。
そうした中、Mir CardはApple Payをロシア国内で利用するための抜け穴となっていましたが、それも今回の措置によって塞がれたわけです。
ロイター通信によると、ロシアのクレジットカード決済システムを管理する団体、NSPK(National Card Payment System)は下のように発表しています。
「アップル社はMir CardによるApple Payのサービスを停止するとNSPKに通達しました。3月24日から、Mir Cardの新規加入者はこのサービスを利用できなくなります。アップル社は既に発行済みのカードでの処理も数日中に停止します」
アップル社だけではなく、米国企業の対ロシア経済制裁はますます厳しさを増しています。マクドナルドがロシアからの撤退を決めたことはその象徴的なニュースとして報じられました。他にも、フェイスブック、インスタグラム、ツイッターといったSNS大手も次々にロシア国内での利用を停止しています。
こうした経済制裁がロシアにプレッシャーを与え、戦争を終わらせることに繋がるのか、あるいは国際社会からの孤立を深めてしまうのか、現在のところでは確たる見通しはついていません。
●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookはhttps://www.facebook.com/WriterKakutani
*1. Apple closes Russian Mir card loophole for Apple Pay, says Sberbank
https://www.reuters.com/technology/apple-closes-russian-mir-card-loophole-apple-pay-says-sberbank-2022-03-25/
*2. Russia Online Smartphone Sales Grab Record 36% Share in Q1 2021
https://www.counterpointresearch.com/russia-online-smartphone-sales-q1-2021/