大きなニュースとして報じられたバルミューダのスマートフォン市場参入。
デザイン面で賛否が集まっているのみならず、価格に対するスペックの低さを懸念する声も多く、「やっぱり国産ブランドはこの分野じゃもう厳しいのか……」と感じた人は多いでしょう。
では、スマートウォッチの市場では、国産ブランドはどのような立ち位置にあるのでしょうか。
世界シェアでは米・中・韓ブランドが圧倒的優位
スマートウォッチグローバル出荷台数シェア 2021年と2020年の第1四半期比較(%)
出典: Counterpoint Research Global Smartwatch Tracker, Q1 2021
上の図は、カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチ社が発表した、2021年第1四半期のスマートウォッチのグローバル出荷台数のシェア状況(Global Smartwatch Model Trackerによる調査)。
Appleが市場シェア1/3を占めている状況で、それに続くのはHuawei、Samsung、imoo(OPPOと同グループのブランド)、Fitbitと、米・中・韓のブランドが並びます。
このあたりの事情はスマートフォン市場と似ているでしょう。
なお、こうしたスマートウォッチの世界シェアを伝えるレポートでは、日本のブランドは名前が挙がることすらありません。
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国産大手はカシオ、ソニー、シチズンの3社
一方で日本国内向けの市場では、複数の国産ブランドがスマートウォッチをリリースしています。
その中で誰もが知っている大手ブランドといえるのは、カシオ、ソニー、シチズンの3社。
そのうちカシオは、スマートウォッチの機能を搭載したG-SHOCKを複数リリース。
最近は新作のリリースがないですが、アウトドア腕時計の「PRO TREK(プロトレック)」シリーズにもスマートウォッチがあります。
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一方のソニーは、昨年に最新のスマートウォッチ「wena 3」(ウェナ スリー)を発売。
スマートウォッチとしての機能がバックル部分に集約されており、ヘッド部分には高級機械式腕時計を組み合わせ可能……という独創的なアイデアが話題を呼びました。
またSuicaを含めた幅広いキャッシュレス決済への対応も、国産ブランドならではのものといえます。
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そしてシチズンは、IoTプラットフォームサービス「Riiiver」と連携し、好きな機能を設定できる新感覚のスマートウォッチ「Eco-Drive Riiiver(エコ・ドライブ リィイバー)」を手掛けています。
こちらもクラウドファンディングでは1億円以上もの資金調達をするなど、発表当初から大きな話題に。
また最近シチズンはソニーの「wena 3」とも積極連携を図っており、その同行も注目されています。
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王道・ド直球な国産スマートウォッチはないのが現状
と、大手3ブランドが各々の個性を生かしたスマートウォッチをリリースしていますが、いずれの製品もスマートウォッチの業界では「変化球」といえるような存在。
各ブランドにしかない強みや魅力はありますが、王道かつド直球で、世界市場を席巻できるスマートウォッチとはいえないのが実情です。
そしてスマートウォッチの国内市場に目を転じてみると、やはり圧倒的な存在感を誇っているのはApple Watch。
ミドルレンジ~ハイエンドの価格帯で、それを脅かす存在になりそうなのは、Google傘下のFitbitやSamsungのGalaxy、それにHuaweiなど、やはり米中韓のブランドとなります。
また格安モデルではXiaomi、Amazfit、OPPOといった中国ブランドが非常にコスパの高い製品を手掛けており、国産大手ブランドは参入も難しそうな状況。
そしてスポーツ向けのモデルでは、Garmin、SUUNTO、Polarといったグローバルブランドがやはり一定の支持を得ており、本格的に運動や各種アウトドアアクティビティに取り組む人は、そうしたブランドの製品を選んでいます。
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スマートウォッチ市場にもバルミューダのような存在は現れるか?
ここまで見てきたように、スマートウォッチの分野でも、国産ブランドは国内・海外ともに厳しい戦いを迫られています。
スマートフォンの分野では、バルミューダが世界展開を見据えて市場参入を行いましたが、同じようなケースはスマートウォッチの分野でも出てくるのでしょうか。
現状ではその可能性は低いでしょう。
スマートウォッチというガジェットは、スマートフォンと比較すると、今も所有している人が圧倒的に少ないのが実情。
仮に日本国内で大ヒット製品を作れたとしても旨みは少なく、グローバルで勝負しようにも、資金力に優れた米中韓のブランドには今から追いつくのは不可能に近いといえます。
カシオ、ソニー、シチズン以外の大手家電メーカーがスマートウォッチを作っていないことも、この分野で戦うことの難しさを物語っているといえるでしょう。
なおカシオについては、もしG-SHOCKが本格的なスマートウォッチ化したら、世界で大きな人気を呼ぶ可能性はありそう。
またソニーのwena 3も、「スマートウォッチ機能をバックル部分に集約する」というアイデアは唯一無二のもの。高級時計との組み合わせが定番化すれば、将来的にシェアが伸びる可能性があるかもしれません。
ただ、やはり王道・ド直球の製品を国産ブランドが手掛けて、その性能とコストパフォーマンスで世界を席巻するのは難しそう。
そうした状況があったからこそ、バルミューダのスマートフォンも「他にはないアイデア」や「デザイン」に走らざるを得なかったのでしょう。
この実情は日本の国力の衰退を象徴するようで寂しくはありますが、どうにか新しい活路を見出す存在が現れることを期待しています。
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