『SmartWatchLife』では、2020年12月7日発売された『Smart Watch Life特別編集 スマートウォッチ完全ガイド』において、神戸にある「アシックススポーツ工学研究所」を訪れ、「モーションセンサー」のアシックスにおける開発拠点を取材した。後日カシオの開発者を交え、両社のキーマン4人による合同リモートインタビューを行った。本日、ランナー向けパーソナルコーチングサービス『Runmetrix』および「モーションセンサー」の正式発表を受け、特別に記事の全文を公開する。なお、取材は2020年11月に行われたため、インタビューの内容や写真はまだ開発段階のものであり、また開発者の肩書等も取材当時のものであることを、ご了承いただきたい。
カシオ×アシックス共同開発「モーションセンサー」が示すウェアラブルの未来
確かな技術力で業界をリードする2つの企業がコラボし、注目のウェアラブルデバイスが来年誕生する。注目のコラボレーションはどのようにはじまり、どこへ向かおうとしているのか?商品開発をリードしたキーマン4人に話を訊いた。
●お話を聞いたのはこの4人
アシックスのビッグデータをカシオが活用
「モーションセンサー」は、クリップで腰に装着するわずか40gのトラッカーだ。9軸のセンサー、GPS、気圧計を備え、フルマラソンも余裕でこなす約20時間のバッテリーライフを持つ。もともとは『カシオ』が慣性センサーを使って身体の動きを捉えるプロジェクトを2012年からスタート、2018年に『アシックス』に声をかけたことからコラボレーションがはじまった。
山本「大学との共同研究を通じ、慣性センサーを用いて身体の動きを高い精度で数値化するデバイスを開発してきましたが、そのデータにどう価値を与えるかという面で課題がありました。そこで、ランニングに多大な知見を持っている方たちと協業できないかと思い、『アシックス』さんにお声がけし、試作機とアプリをお見せしたのが始まりです」
森「『アシックス』もデジタル技術の活用に力を入れていたところで、さまざまな企業からデバイスを見せてもらってはいました。ただ、コンシューマーに届けられるほどのクォリティーを持った試作機は『カシオ』さんだけでしたね」
平川「スマホなしで使えるとか、センサーの1秒間の分解能だとか、ランニングの動きを理解している方々が作ったことが分かるスペックも大きな魅力でした」
「モーションセンサー」のサイズは40×62×18mm。『カシオ』側はもっと小型化すべきと思っていたところ、小さすぎると気づかずに洗濯機に入れられてしまうと『アシックス』側からアドバイスがあったとか。
アプリのレーダーチャートは、データをただ並べるだけではなく、その意味も分かりやすくユーザーに伝えるための『アシックス』のこだわり。
コーチングの内容は、ランニングの対面指導経験がある『アシックス』の研究員やランニングコーチから、言葉遣いなどのアドバイスを受けている。
「アシックススポーツ工学研究所」の知見により唯一無二のトラッカーに変貌
こうして始まった両社の協業だが、センサー自体の基本設計は試作機から大きく変わってはいない。ただ内部処理のアルゴリズム、アプリによる評価やコーチングの内容は、「アシックススポーツ工学研究所」の知見を取り入れ、大きくアップデートされた。
山本「データの内部処理に関しては、『アシックス』さんがこれまで培われてきた知見を活かして、アルゴリズムの調整を繰り返しました。走り方に癖のある人の身体の動きでも、高い精度で捉えられるまで追い込んでいます」
おかげで「モーションセンサー」を着けて200mも走れば、ランナーのおおよその癖を捉えられるほど高い精度を獲得できたと言う。また、「アシックススポーツ工学研究所」では、20台を超えるモーションキャプチャシステムと地面反力計により、三次元的にランナーの動きを解析、このプロジェクトだけで、のべ1000件以上の走行からデータを取り、テスト走行の総距離は2万キロをゆうに超える。こうして集めた膨大なビッグデータから、効率が良く、身体に負担のない走りを分析し、詳細なコーチングをすることが可能になった。
平川「例えばこれまでの研究から、接地した脚の力が弱いと反対側の骨盤が下がることが分かっています。『モーションセンサー』は骨盤の1度の傾きも感知できるので、このようなランナーの弱点を正確に把握でき、改善のための適切なコーチングを行えます」
また、使えば使うほどコーチングの精度が増すパーソナライズ機能も特徴だ。例えば重心の上下動が少なければ少ないほど理想的なフォームと言えるが、同じ上下動でも跳ね上げる動きが強いのか、それとも沈み込む力が強いのかは、各ランナーの個性と言える。「モーションセンサー」を使い込むと、こうした個性を判断した上で、それに応じた重心移動のアドバイスを行ってくれるのだ。
「アシックススポーツ工学研究所」では、固定型のモーションキャプチャ専用カメラを複数組み合わせ、ランナーの動きをリアルタイムに3Dモデルとしてキャプチャ。数多くの被験者からデータを収集している。
最新の固定型モーションキャプチャ専用カメラ。被験者の動きを1秒間でなんと250コマ記録している。
モーションキャプチャシステムで捉えた3Dモデル。もちろん自由自在にズーミングや回転ができる。ちなみに平川氏は各軸を1度単位で確認しながら被験者のフォームをチェックし分析していた。商品版の「モーションセンサー」も1度単位でランナーの動きを感知できるため、モーションキャプチャシステムとキャリブレーションをとることで、研究所が蓄積してきたデータに基づくコーチング等の知見を適用できる。
モーションキャプチャ専用カメラは多い時で24台程度使用する。専用カメラがテストランナーを取り囲む様はまさに圧巻。
床には地面反力計が埋め込まれている。この地面反力計は、接地の際、身体にかかる力や、その力が働く方向を感知することができる。ランニング時は、通常体重の2〜3倍の力が身体にかかっている。
地面反力計が計測した力もリアルタイムで画面に表示される。線の長さが力の強さで、向きが力のかかっている方向を表している。
「モノ」から「コト」へ。移り変わるビジネスモデル
この「モーションセンサー」は、ランナーに大きなメリットをもたらすために作られた、モノづくりの見本のような真摯でストイックな商品だ。同時に、両社の新しいビジネスモデルの試金石とも言える存在でもある。
坂田「『モノ』から『サービス/コト』というビジネスのトレンドは『カシオ』でも非常に意識しています。この『モーションセンサー』は、お客様に体験そのものを提供するサービスをセットに考えながら、開発を行っています」
山本「より高度なコーチングなのか、または機能に課金するのか、方向性はこれから議論を重ねていきますが、将来的にはサービスや体験をビジネスの軸のひとつにしていくつもりです。売って終わりという商品ではありません」
森「『アシックス』は、個々のデータを活用したパーソナライズされたサービスの強化を中長期的なビジョンとして掲げています。ウェアラブルデバイスは、そのための一番大切なテクノロジーだと思っています。『モーションセンサー』は、「One to One」という究極の目標への第1歩とも言えるのです」
もともと高いプロダクト力に定評のある両社が、プロダクトの提供だけではなく、サービスの提供にも本腰を入れ始めた。今回のランナー向けの新サービスはその嚆矢となる。モノづくりを極めた『カシオ』と『アシックス』の新しい挑戦は始まったばかりだ。
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