Apple Watch, Fitbit, Oura Ringといったウェアラブル機器は健康に関心が強い人たちにも人気です。
心拍数や歩数などを把握できることはもはや当たり前、現在ではどの機器が睡眠パターン、血圧、血糖値、皮膚体温といった医療的な身体データを正確に測定できるかがよく話題になります。そこからさらに、ウェアラブル機器は現実世界で病気を早期発見するためのデバイスとしても有効なのでしょうか?
南オーストラリア大学の研究者らが医学ジャーナル『JMIR mHealth and uHealth』に最近発表した研究(*1)は上の疑問について調べたものです。そして、ウェアラブル機器の医療現場での活用をさらに後押しするだろう結果を報告しています。
とくに脳卒中や新型コロナウイルス感染に伴う心房細動の早期兆候の検出にウェアラブル機器は有効であるということです。
*1. Real-World Accuracy of Wearable Activity Trackers for Detecting Medical Conditions: Systematic Review and Meta-Analysis.
https://mhealth.jmir.org/2024/1/e56972
延べ100万人以上のデータを解析
この研究は10の電子論文データベースのなかからウェアラブル機器が病気や転倒などの予測や計測に使われたケースを検索しました。解析の対象と認められた28の研究、延べ1,226,801人の対象者(28歳から78歳まで)のデータから導かれた結論は以下の通りです。
●ウェアラブル機器が正確に判断できる確率
・新型コロナウイルス感染の状態 (陽性または陰性)- 88%
・心房細動 – 87%
・転倒 - 82%
新型コロナイルスについては抗原検査と、心房細動については医師による診断と、それぞれ同等程度の信頼性がウェアラブル機器にはあるとのことです。
元々はフィットネス・トラッカーとして使用されることを前提に発展してきたウェアラブル機器ですが、現在ではその提供する機能は一般的なスポーツの分野に留まらず、医療従事者たちが注目するレベルにまで到達しているようです。
研究を主導したベン・シン博士はニュースリリースで以下のように述べています。
「ウェアラブル機器は人々が主体的に健康を管理することを助けるだけではなく、リアルタイムで健康に関する問題を検知することにも役立ちます。人々が早い段階でその問題に対処することで、事態が深刻化することを防げるかもしれません」
その一方で、共同研究者のキャロル・マーハー教授はウェアラブル機器の可能性を評価しつつも、臨床現場で活用するためにはより多くの集団による実証結果が必要との見解を示しています。
●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookはhttps://www.facebook.com/WriterKakutani