アップル社がApple Watchの最新モデル(Series 9, Ultra2)からSpO2(酸素飽和度)測定アプリを取り除くことによって、米国内への輸入販売禁止措置を回避する意向であるとロイター通信が1月15日付で報じました(*1)。
*1. Redesigned Apple Watches not subject to import ban, US Customs says.
https://www.reuters.com/technology/redesigned-apple-watches-not-subject-import-ban-us-customs-says-2024-01-15/
これまでの経緯
カリフォルニア州アーバインに本社を置く健康機器メーカーのMasimo(マシモ)社はアップル社が同社の元従業員を引き抜き、血中の酸素濃度を測定する技術を盗み、Apple Watchで使用していると訴えてきました。
アップル社がSpO2(酸素飽和度)測定機能をスマートウォッチに搭載し始めたのは2020年、Apple Watch Series 6からのことです。
マシモ社はその年にアップル社に対して特許侵害の訴訟を起こし、アップル社はそれに対抗する訴訟をマシモ社に対して起こし、事態は泥沼化していました。
米国国際貿易委員会(ITC)はマシモ社の主張を支持し、昨年12月にApple Watch Series 9 及びUltra2の米国内への輸入及び販売を禁止しました。アップル社は年末商戦たけなわのクリスマス・イブに同モデルを公式ウェブサイト及び直営店舗での販売を中止することを余儀なくされましたが、その輸入販売禁止措置は年末には一時凍結されています。
アップル社は論争となっている機能を取り除くことで、長期的な解決を図ろうとしているようです。
Apple Watchユーザーは何を失うのか
SpO2(酸素飽和度)測定アプリについては以前にも紹介しました。体内の酸素濃度を数値化し、支障があると推定される場合はユーザーに警告するものです。新型コロナウイルスが猛威を振るっていた頃には感染の有無を判断する材料として大きな注目を集めました。
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アップル社がこのアプリを完全に取り除くのか、あるいは自社独自の技術を使う改善版をリリースするのか、そうした変更は米国向け製品に限定されるのか、詳細は現在のところ不明です。
近年、アップル社はApple Watchの健康関連機能をますます拡充し、ユーザーは大きな恩恵を受けていますが、思わぬ落とし穴が待っているのかもしれません。事態がどのように展開するか、今後も目を離せないようです。
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●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookはhttps://www.facebook.com/WriterKakutani