アメリカに住む成人の約4分の1(21%)が日常的にスマートウォッチ(Apple Watchなど)、あるいはウェアラブルのフィットネストラッカー(Fitbitなど)を使用している。
そんな研究レポート(*1)をシンクタンク「ピュー研究所」が発表しています。
2019年6月3-17日に実施した調査を元にしたものです。少し古いデータになりますが、逆に言えば新型コロナウイルスのパンデミックによる「巣ごもり需要」の影響は受けていません。
*1. About one-in-five Americans use a smart watch or fitness tracker.
全米から4,272人がオンラインでこの調査に参加しました。米国社会の実情をなるべく正確に反映するため、データのサンプリングは慎重に行われたとのこと。性別、人種、民族、所属党派、教育、その他のカテゴリーごとに、回答者の分布を実際の比率に近づける試みがなされました。その結果、興味深い分析結果がいくつか報告されています。
性別、人種、年代別で意外な結果も
スマートウォッチやフィットネストラッカーはけっして安いモノではありません。当然のことながら、収入は大きな要素になります。世帯収入が75,000ドル以上のアメリカ人の31%が日常的にスマートウォッチかフィットネストラッカーを使用していると回答しています。
当時の為替レートは1ドル約110円でしたので、約825万円以上という計算になります。世帯収入が30,000ドル(約330万円以下)になると使用者の割合は12%まで落ちます。全世帯を平均すると、前述した21%という数字になるというわけです。
収入と密接に関連していると思われますが、学歴もまたスマートウォッチやフィットネストラッカー使用者の割合に影響する要素のひとつです。
大学院卒以上が27%、大学卒が25%、そして高校卒が15%と、学歴が高くなるほど、使用者の割合が大きくなります。
ここまでは誰もが予想できる結果だったと思います。しかし、アメリカ社会の人口分布とスマートウォッチやフィットネストラッカーの使用割合との関連を様々な切り口から見ていくと、意外な結果もいくつか明らかになりました。以下、主なものを箇条書きで列挙します。
●女性の方が男性より使用率が高い(女性25%、男性18%)
●有色人種の方が白人より使用率が高い(ヒスパニック系26%、黒人23%、白人20%)
●若い世代の方が高齢世代より使用率が高い(18-49歳25%、50歳以上17%)
●郊外に住む人は都会生活者より使用率が高い(郊外24%、都会20%、田舎18%)
一般的には、アメリカで富裕層と言えば、郊外に住む高齢の白人男性が連想されます。しかしながら、このステレオタイプ的発想はスマートウォッチやフィットネストラッカーの普及度を予測するためには必ずしも有効ではないようです。
レポートは別の側面からもうひとつ興味深い分析結果を報告しています。「フィットネストラッカーのデータを心臓病の研究に役立てることを了承しますか?」という質問への回答です。これが上の分析結果と相似した傾向を示したのです。
「了承します」と回答した人は有色人種の方が白人より多く、18-49歳の方が50歳以上より多かったということです。
経済的余裕があることに加えて、新しいテクノロジーへの恐れや抵抗感が比較的小さい層がスマートウォッチやフィットネストラッカーに関しては主流ユーザーになるのかな、とこれは個人的な感想です。
●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookはhttps://www.facebook.com/WriterKakutani