ウィンタースポーツの季節たけなわになりました。私はけっして上手くもきれいにも滑れませんが、それでも30年以上に渡ってのスキー愛好家でもあります。
私が住む南カリフォルニアは実に外遊びに適した土地です。気候は温暖そのもので、私などは1年のうち300日くらいはTシャツ半ズボンで過ごしています。それにもかかわらず、スキー場へは自宅から1時間半ほどのドライブで到着することができるのです。
先日、とあるスキー場に日帰りで行ってきました。普段は主にランニングやサイクリングのデータ収集に活用しているApple Watchがスキーにどれだけ対応しているかを確かめることも目的のひとつでした。
リフト待ち時間にも対応したワークアウト・アプリ
Apple Watchのスクリーンショット1:ワークアウト開始
さっそく滑り出す前に、Apple Watchのワークアウトから「ウィンタースポーツ」を選択します。画面をタップするとデータ計測が始まり、終了するときは画面を右にスワイプして「終了」ボタンをクリック。操作方法はランニング等、他のワークアウトと同じです。
私には気にかかっていたことが2つありました。スキー場ではずっと滑っているだけではありません。リフトに乗ることはもちろんですが、立ち止まって景色を眺めるとか、友人と談笑するとか、とにかく動かない時間が頻繁にあります。その都度、Apple Watchのワークアウトを「一時停止」しなくてはいけないのか? という心配がそのひとつでした。
なにしろ、私はハイキングやトレイルランなどをしている最中に、しょっちゅう「ワークアウトを終了しましたか?」とApple Watchに訊ねられ、その都度「いいえ」と答えなくてはいけないことに辟易した経験が多いのです。
スキーをしているときは分厚い手袋も着用していますので、もしリフトに乗るたびにそれを外してApple Watchを操作しなくていけないとしたら面倒だなあと思っていました。
結論から言えば、そんなことはありませんでした。最初の1本目を滑り始める前から、スキー場を離れるまでの間、一度もあの忌々しいメッセージを見ることはありませんでした。どうやらApple Watchはゲレンデでは止まっている時間が多く発生することをワークアウト・アプリに織り込み済みのようです。
やはり作動してしまう転倒検知機能
もうひとつの私の懸念は転倒検知機能と緊急通報に関するものでした。アメリカのスキー場で利用客にApple Watchのその機能を無効にするよう呼び掛けているところがあるという記事を先日書きました。
関連記事:Apple Watchと iPhoneの緊急通報サービス、誤作動が救助活動の妨げになる恐れ
ゲレンデで転倒すると(あるいはただ激しい着地をしただけで)、Apple Watchがそれを自動検知し、それだけではなくユーザーが知らないうちに緊急通報サービスを作動してしまうケースが多く発生しているからです。
スキーやスノーボードはある意味、転倒することが前提となったアクティビティーです。少なくとも私にとってはそうです。俺は上手いから一度もこけないぞ、という人も多くおられるでしょうが、私は1日に1回か2回かは頭から雪に突っ込むような倒れ方をすることも珍しくありません。
今回も一度だけ、そんな場面がありました。そしてやはりApple Watchはその転倒を見逃してはくれませんでした。
Apple Watchのスクリーンショット2:転倒検知
「ひどく転倒されたようです」とのメッセージが表示されたApple Watchの画面で「大丈夫です」をクリックして事なきを得ました。もし気がつかないでいたら、私も救急隊員にSOSを発信してしまっていたかもしれません。
もちろん、大怪我をして意識不明に陥ったようなときには生命を救ってくれるかもしれない重要な機能なのですが、そうでないときの方が圧倒的に多いわけですし、本当に救助を必要としている人を危険にさらすわけにはいきません。今日はこれから何回もこけるぞ、とあらかじめ分かっている人は、やはりスキー場では緊急通報サービスを無効にしておいた方がよいかもしれません。
正確に把握されていたカロリー消費量
感心したのはApple Watchのワークアウト・アプリが計測するカロリー消費量の正確性でした。
異なるエクササイズの消費カロリー量を比較した研究結果(*1)がハーバード大学医学大学院のウェブサイトに公表されています。
*1. Calories burned in 30 minutes for people of three different weights.
https://www.health.harvard.edu/diet-and-weight-loss/calories-burned-in-30-minutes-for-people-of-three-different-weights
体重を125パウンド(56.6キロ)、155パウンド(70.3キロ)、そして185パウンド(83.9キロ)の3つに分け、それぞれが30分間運動した時のカロリー消費量をエクササイズの種類ごとに算出したものです。
それによりますと、ゲレンデ・スキーを30分行うと、125パウンドの人が消費するカロリーは180cal、ゆっくりとしたペース(1マイル12分、1キロ7分30秒)のジョグを30分したときは240calなのだそうです。
つまり、ゲレンデ・スキーの運動強度は、ゆっくりとしたジョグよりやや低い程度だということなのですが、私がApple Watchで収集したデータもそれを裏付けていました。
私の体重は約130パウンド。上のレポートの最軽量サンプルとほぼ同じです。そして実際にApple Watchが計測したカロリー消費量はスキーのときもジョグのときもほぼ同じ程度だったのです。
iPhoneに記録されたワークアウトのデータ。左がスキー、右がジョグ
スキーを2時間(リフトに乗っていた時間も含む)したときのカロリー消費量は417calでした。実際に滑っていた時間をその半分だと仮定すると、180cal x 2 に少々のプラスアルファで収まる範囲です。
それに近いカロリーを消費した運動を探してみると、8.5キロを54分かけて走ったとき(キロ6分21秒ペース)が445calでした。これも30分240calとは誤差の範囲でしょう。
Apple Watchがすごいのか、それともハーバード大学医学大学院がすごいのか。それはとにかくとして、スキーの運動量が軽いジョグのそれに近いということが実際のデータで証明されました。
半日ほどスキーをするのはとくに大変なことでも珍しいことでもありませんが、ずいぶんと疲れてしまったことや、翌日は筋肉痛になってしまった人もいるかもしれません。それもそのはずで、2~3時間ゲレンデを滑るということは、10キロほど走るのとあまり変わらないくらいの運動量なのです。朝から晩まで1日中滑ったとすれば、実はフルマラソンを走るのと同じくらい体を酷使したのかもしれないのです。
ウィンタースポーツは楽しいだけではなく、運動量も十分で、つまり健康にも良いようです。さあウィンタースポーツのシーズンが終わらないうちにゲレンデへ出かけてみませんか。
●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookはhttps://www.facebook.com/WriterKakutani