関西労災病院が心電図メール相談、Apple Watch貸出サービスを開始
約半数に自覚症状がないとも言われる心房細動(不顕性心房細動『隠れ心房細動』)は、非常に重篤な症状や後遺症を残す恐れのある脳梗塞・心不全を引き起こす可能性があります。
関西労災病院では、Apple Watchや携帯型心電計、健康診断などの心電図データから受診すべきかどうかを不整脈専門医師がアドバイスする無料メール相談とApple Watchを外来患者さんに無料で貸し出すサービスを2022年5月より開始しています。
このサービスを通じて『隠れ心房細動』の患者さんを早期に見つけ出し、早期治療することにより脳梗塞・心不全の撲滅をめざしています。
心房細動はサイレントキラー
「心房細動」は心臓の心房という部屋が細かく震えるように動く病気で、血液のうっ滞から心臓内にできた血栓が脳の血管を詰まらせて脳梗塞を発症させたり、血液循環の悪化から心不全を発症させたりする疾患です。
発症当初は無症状のことが多く、診断が遅れがちで、脳梗塞や心不全を発症してから心房細動の診断に至る方が多いため「サイレントキラー」と呼ばれています。
そこで、症状のない『隠れ心房細動』の患者さんをいかに見つけ出せるかが重要となります。
この『隠れ心房細動』を見つけるため、関西労災病院ではデジタル技術で解決をめざす試みを始めています。
2020年9月にアプリが医療機器承認されたApple Watchなどの家庭用心電図記録デバイスは、従来の検査機器では診断できないような心房細動の診断も可能となっています。
しかし、これまでそれらの情報を医療機関側では必ずしも十分に活用できていませんでした。
そこで、関西労災病院では2021年2月より、家庭用心電図記録デバイスのデータを積極的に診断に活かしています。
心電図メール相談
Apple Watchなどの心電図データから不安に思っても、動悸などの自覚症状がない方は、忙しさから受診を後回しにしがちです。
そこで、忙しくて医療機関を受診できない方のために、メール相談(無料)を行っています。
不整脈について医師の診断を受けていない方で、心電図の異常を示す結果をPDFファイルで送信できる方が対象で、病院ホームページから申し込み、心電図データを送ると、不整脈専門医師が受診すべきどうかをメールでアドバイスします。
Apple Watch貸し出し(無料)
病院で心電図検査を行っても異常が出なかった方で動悸症状などに悩まれている方にApple Watchを貸し出し(無料)、症状が出たときすぐに記録してもらい、心電図診断の参考データとしています。
その他、カテーテルアブレーション治療後の再発の有無の確認や、心不全患者さんの心拍数・運動耐用能確認などの診療にも役立てています。
【 貸出対象者 】
動悸症状があるが原因(心電図診断)が不明な方、原因不明の脳梗塞を発症された方など、医師が必要と認めた方
【 活用事例 】
(1)不顕性心房細動の検出―78歳女性(月に1、2回血圧計で脈不整あり)
母の日に子どもからApple Watchをプレゼントされる
➡装着中に脈波異常を検出、続いて心電図を記録し、心房細動を検出
(2)動悸の心電図診断―31歳男性(月に1、2回数分の動悸発作あり)
1週間胸部貼付型心電計を1週間使用するも診断に至らず(皮膚水疱形成)
➡Apple Watchを装着して心房細動を記録
カテーテルアブレーション治療で心房細動を根治する
【 カテーテルアブレーション治療とは? 】
カテーテルという細長い器具を足の付け根から静脈を通じて心臓に入れて、心房細動の原因となる肺静脈の入口付近を焼灼もしくは冷凍するカテーテルアブレーション治療で、心房細動を根治することができます。
また、根治するだけでなく、脳梗塞や心不全を予防、健康寿命を伸ばすことが示されています(※CABANA研究による)。
【 関西労災病院のカテーテルアブレーション治療について 】
当院では年間約600件のカテーテルアブレーション治療を行っており、治療時間は、発作性心房細動には冷凍凝固バルーンアブレーションにて約30分、持続性心房細動で60~90分程度です。
希望される方には全身麻酔での治療も可能です。
治療成績は発作性心房細動で80~90%、持続性心房細動で70%くらいの方は、心房細動の再発がありません。
持続性心房細動は、肺静脈の入口付近だけでなくその他の部位にもアブレーションが必要な場合があり、当院ではCARTO UNIVUやEnsite、RHYTHMIAなどのマッピングシステム(不整脈原因部位を調べる器具)を用いて、患者さん毎に心房細動の原因となっている部位を調べるオーダーメイド治療を実施しています。
CARTO UNIVU を用いた僧房弁置換術後の心室頻拍アブレーション
同一の心房頻拍に対して、従来の3Dマッピングシステムと Rhythmiaを用いて描出された頻拍回路の比較
その他、心房細動による心原性脳梗塞を予防する左心耳閉鎖術や脳梗塞発症後の急性期血管内治療など、関西労災病院では『隠れ心房細動』の発見から治療まで、心房細動に関する様々な診療が可能です。
経皮的左心耳閉鎖術デバイス Watchman
関西労災病院概要は「先進の技術で地域の患者さんの心臓と脳を守る」をモットーに、スタッフ一同脳梗塞・心不全の撲滅をめざします。
関西労災病院概要
病院名:独立行政法人労働者健康安全機構 関西労災病院
所在地:兵庫県尼崎市稲葉荘3丁目1番69号
病院長:林 紀夫
病床数:642床
開 院:1953年1月
病院公式サイト:https://www.kansaih.johas.go.jp/
循環器内科サイト:https://www.kansaih.johas.go.jp/junkankinaika
心房細動ページ:https://www.kansaih.johas.go.jp/junkankinaika/treatment/atr
アップルウォッチ・携帯型心電計心電図相談:https://www.kansaih.johas.go.jp/formecg.html
脳神経外科・脳神経血管内治療科ページ:https://www.kansaih.johas.go.jp/kakuka/shinryo_list/kakuka09.html
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCd_S9v3U2zgF7pD6jiXFZ0Q