米国のIT系調査会社(International Data Corporation, “IDC” )が最近発表したレポート(*1)によりますと、ウェアラブルの世界全体の出荷量が2022年第2四半期で前年より6.9%下がり、2022年全体でも前年比で横ばいになるだろうということです。
コロナ過の直近2年間は「バブル」だったのか
IDCではこのウェアラブル市場が下降トレンドに陥った原因として、インフレ、景気後退への恐れ、そして他産業での消費拡大を挙げています。加えて、直近の2年間にウェアラブル市場があまりにも急成長し過ぎたとも指摘しています。
新型コロナウイルスのパンデミックにより、いわゆる「巣ごもり需要」が世界的に高まったことが、ウェアラブル機器の急激な市場拡大を後押ししていたということのようです。
さらに最近のドル高が事態に拍車をかけています。米国内での新製品価格は以前と同じであっても、他の貨幣では大幅な値上げとなってしまう現象が起きているからです。
最近発表されたApple Watchの最新モデルであるApple Watch Series 8が日本では約6万円で販売されていることなどはその例と言えるでしょう。米国内では約400ドルくらいですので、1年前なら日本での販売価格はもう少し安かったはずです。これと似たことが世界中で起きているようです。
しかし、IDCはウェアラブル機器の出荷量は2023年には再び上昇傾向に転ずると予測しています。新たな購入者が増えることが見込めることと、買い替え需要は相変わらず堅調であるから、ということです。
シェア大手5社は変わらず
ウェアラブル市場の内訳を見ると、トップ5社(Apple, Samsung, Xiaomi, Huawei, Imagine Marketing)の顔触れは変わっていません。各社が軒並み2022年第2四半期では前年の同時期と比較して売り上げを落としました。
その一方で、トップ5社以外のブランドが占めるシェアが拡大しています(37% → 43%)。
Wearables Growth Faces Challenges Through 2022, According to IDC Trackerより
Apple、Samsung、そしてGoogleが高級品路線を続けるなか、低価格な類似製品を販売するブランドが全体的な平均販売価格を押し下げています。
世界経済が新型コロナウイルスのパンデミックから脱しつつある現在、ウェアラブル市場も落ち着きを取り戻し、成熟に向かっていると見るべきなのでしょうか。
●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookはhttps://www.facebook.com/WriterKakutani
*1. Wearables Growth Faces Challenges Through 2022, According to IDC Tracker.
※本記事のリンクから商品を購入すると、売上の一部が販売プラットフォームより当サイトに還元されることがあります。掲載されている情報は執筆時点の情報になります。