フィットネストラッカーとしてのApple Watch
Apple Watchは様々な機能を備えたスマートウォッチです。
スポーツやフィットネス、そして健康関連の機能はあくまで全体の1部にすぎず、その部分だけを取り上げて評価するのは公正ではないかもしれません。
しかしながら、スポーツ以外の用途で腕時計を手首に巻く習慣がまったくない人間もこの世の中には存在します。
今回はそうしたタイプのユーザーから見たApple Watchの魅力と特長、そして少しだけ難癖のようなエピソードも紹介したいと思います。
同じような視点からFitbit Charge 5を紹介した記事もありますので、そちらと比較してみても面白いかもしれません。
関連記事: 運動オタクがFitbit Charge 5を6週間着けっぱなしで過ごしてみた。その率直な感想とは?
過不足なく揃ったランニングウォッチの機能
ランナーたちに人気の腕時計と言えば、Garmin, Suunto, Polarなどが有名です。
ほかにもFitbit, WHOOP, Oura Ringなどのフィットネストラッカーを好む人もいるでしょう。
もちろん、Apple Watchを愛用するランナーも少なくありません。
関連記事:米ランニング専門誌はApple Watch Series 7をどう評価した? ランナーから見た新作Apple Watchの利点とは
私自身、GarminとFitbitと比べても、Apple Watchのランニングに関する機能はさほど劣っていないと感じています。ランニング中のペースや距離、そして心拍数を大きな画面で確認することができますし、GPS機能もかなり正確だと思います。
ガチガチの競技ランナーはあるいは別な感想を抱くかもしれませんが、私のような市民ランナーにとってはApple Watchで十分以上の用が足ります。
そしてApple Watchの強みのひとつが、他のアプリを追加できることです。『Strava(ストラバ)』のようなスポーツ専用アプリを使えば、より詳細な情報を取得できますし、同好の士が集まったコミュニティに参加することもできます。
関連記事:Apple WatchでSTRAVAを使うと運動したくなる!そのワケは?
かなり正確なワークアウトの自動認識
Apple Watchでワークアウトを記録するには、手動でアプリを起動し、運動内容に最も近いと思われる種類のワークアウトを探します。例えば、ランニング、スイミング、サイクリング、あるいは筋力トレーニングなども選択肢にありますし、もし見つからなければ追加することもできます。
ユーザーが意識的にアプリを起動する以外に、ある種の運動をユーザーが始めると、Apple Watchが自動的に検知し、通知してくれる機能もついています。私の場合、屋外にランニングに出かけたとき、そしてジムでロウイングを始めたとき、どちらも数分後にApple Watchがプルプル震え、そのワークアウトを記録するかどうかを尋ねられました。
アップル社のサポートページ(*1)によると、自動検知されるまでの時間はワークアウトの種類によって異なるそうです。
数分間のタイムラグがある代わりに、Apple Watchの動作認識はかなり正確だと思います。Fitbitにはシャワーを浴びていた時間を水泳と認識されたことがありますが、Apple Watchではそんなことは起きませんでした。
少しイジワルな視線から見たApple Watchの難点
公平に言って、Apple Watchはフィットネストラッカーとしても高品質の製品だと思います。
しかしながら、私のようにスポーツに関しては熱心を通り越してマニアックの域に達しているユーザーだと、いくつかの不都合を感じることがあったのも事実です。あくまで個人的な感想で、ほとんど言いがかりに近い内容ですが、以下に紹介したいと思います。
画面の大きさがかえって仇になるケース
Apple Watch は特に最新バージョンのSeries7になってからは画面サイズが以前より大きくなり、ランニングをしている最中も数字や文字を読み取りやすくなりました。その反面、サイズが大きいために動作の邪魔になる局面もたまにあります。
私の場合で言えば、野球でバットを振るときに両手首が上下に重なるのですが、その際にバンドの留め具がこすれて、違和感がありました。また重量挙げのクリーンという動作で手首を後ろに反らすと、画面の外枠が手の甲に触れる感触が気になりました。
どちらの場合も、Apple Watchは完全に動作の邪魔だと言うほどでもなく、着けた状態でもパフォーマンスに大きな影響はないかもしれません。しかし、どんな些細なことでも気になるからこそマニアックなのであって、結局私は野球と筋トレではApple Watchを外すことにしました。そうなると、その間のデータは取得できないことになります。
ワークアウトを終了しましたか?
長距離を走っているときには、心ならずも歩く局面があります。トレイルランなどの起伏が激しいコースでは険しい登り坂もありますので、その部分は歩くことを選択せざるを得ないときがあります。
客観的にはゆっくり歩いて、楽をしているように見えるかもしれません。しかし、ランナー自身からすると一生懸命に足を前に進めているわけで、心の中では「ネバ―ギブアップ!」と自分に言い聞かせているものです。
そんなとき、Apple Watchに「もうワークアウトを終了しましたか?」と尋ねられるのは、控えめに表現してもあまり気持ちの良いものではありません。
これは私だけの経験ではなく、以前あるトレイルランに参加して、急勾配の山道をよじ登るように歩いていたときに、周囲の何人ものランナーがApple Watchに向かって怒りの声を上げているのを見たことがあります。
プールで画面が濡れた時にパネル操作が効かなくなる
Apple Watchは水泳の記録もとれます。プールの距離(例:25メートル)を指定すると、往復した回数、距離、ペース、ストローク数、消費カロリー数などが分かり、大変便利です。
ただ、あくまでも私の場合なのですが、泳ぎ終わったときに「終了」ボタンを押すのに苦労します。パネルが濡れているせいなのか、それとも私の指が濡れているせいなのかは分かりませんが、いくら画面をスワイプしようとしても、ウンともスンとも言わなくなるのです。
タオルで画面と手を拭けばよいだけの話なのですが、やはり水泳に対応している以上は、水に濡れた状態でも操作できるようになってもらいたい、と願うことは贅沢に過ぎるとは言えないでしょう。
転倒検出機能の誤作動
Apple Watch の転倒検出機能が実際にひとりの命を救った事件を紹介したことがあります。
関連記事: 意識を失った持ち主に代わってApple Watchが緊急通報。ロサンゼルス近郊で起きた人命救助の例
このように非常に意義のある機能なのですが、やはりまだ完璧だとは言えないようです。私も1回だけ誤作動を経験しました。
私は高校野球のコーチをしています。試合中にダグアウトのベンチに座っていた時のことなのですが、ある選手のファインプレイに一瞬だけ飛び上がって喜び、その後はまたじっとベンチに座っていたことがありました。
突然の激しい上下移動とその後の静止。この一連の流れを、Apple Watchは私が転倒して、その後でじっと動けない状況だと勘違いしたようです。
「転倒しましたか?」とのメッセージが画面に表示されました。もちろん、すぐに「いいえ」のボタンを押したので、それ以上何も起きなかったわけですが、もし仮に私がそのメッセージに気がつかないか、あるいは放置すれば、救急車を呼ばれていたかもしれません。
スポーツおたくがApple Watchを1か月以上使い続けてみた感想
Apple Watchのスポーツ・フィットネス関連機能はそれだけでは購入の対象にはならないけど、けっして他社の類似製品に大きく劣ることはない。まるでスマホを小型にしたような、他にたくさんの機能が充実していることを考えると、やはりベストセラーになるだけの価値はある。それが私の最終的な感想です。
●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookは https://www.facebook.com/WriterKakutani
*1. Apple Watch でワークアウト App を使う
https://support.apple.com/ja-jp/HT204523