米国テネシー州で元ガールフレンドの居場所を知るために、Apple Watchを相手の車のタイヤに秘かに取り付けた男性が逮捕されるという事件が起きました。
事件を最初に伝えた地元テレビ局(*1)の報道によると、この男性はそれまでにも被害者を殺すと何回も脅かしていたということで、被害者は公的機関からの保護を求めていました。
テクノロジーを悪用するサイバー・ストーキング
警察の発表によると、被害者の男性と加害者の女性の間には以前からトラブルがあり、恐怖を覚えた女性が保護命令書を受け取るために地域の家族安全センターに立ち寄ったところ、その後をつけてきた男性が建物の駐車場で女性の車に細工をしているところを発見されました。
車の前輪スポークにApple Watchが取り付けてあり、警察官の尋問に男性はApple Watchが自分の所有物であり、女性の居所を追跡するためだったことを認め、電子機器を使用したストーキング行為で逮捕されました。
元カップルは以前、『Life360』という家族向けSNSアプリを使って、お互いの居場所を教えあっていました。しかし、女性が家族安全センターに向かう前にこのアプリを消したところ、ストーカー男性の怒りを買ったようです。女性は居場所を教えるように激しい言葉で要求するテキストメッセージが男性から送られてきたことを訴えています。
この男性は昨年も家庭内暴力(DV)の訴えを2回受けているということです。元々、ストーカー気質の人間に、本来は便利であるべきテクノロジーが悪用されたということでしょう。
インターネットやスマートフォンなどのモバイル機器を悪用するストーキング行為をサイバー・ストーキングと呼び、大きな社会問題になりつつあります。2021年2月に発表された論文(*2)によると、通報されたストーキング行為の約35~46%までが、こうしたテクノロジーによって引き起こされているそうです。
サイバー・ストーキングにApple Watchが悪用されたケースは極めて稀だということですが、本来は忘れ物防止のための製品であるAirTagを使ったストーキングのケースはこれまでにもいくつか報告されていて、アップル社はこれまでにお様々な悪用防止策を講じてきました。アップル社は今回の事件については公式なコメントを発表していません。
●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookは https://www.facebook.com/WriterKakutani
*1. Man arrested for attaching Apple Watch to girlfriend’s car
https://www.wsmv.com/2022/03/27/man-arrested-attaching-apple-watch-girlfriends-car/
*2. A systematic literature review on cyberstalking. An analysis of past achievements and future promises
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S004016252031252X
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