プロテニスの大坂なおみ選手が2022年のツアーに戻ってきました。
昨年はメンタルヘススに悩んでいることを告白し、全米オープン3回戦で敗れた後、無期限休養を発表していましたが、今年最初のグランドスラム大会である全豪オープンに出場したのです。
同大会連覇はならなかったものの、かつての世界ランキング1位選手のツアー復帰は多くの注目を集めました。
スマートウォッチの通信機能が大会ルールに抵触
大坂選手はナイキ、ルイヴィトン、日産自動車など数多くの大企業とパートナーシップを結んでいます。
その中にはスイスの高級腕時計メーカーであるタグ・ホイヤー(TAG Heuer)も含まれ、今年の全豪オープンの直前には同社の最新モデルである「Aquaracer」限定版のデザインに参加したことも自身のインスタグラムで発表しました。
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しかし、大阪選手は全豪オープンでこの腕時計「アクアレーサー プロフェッショナル300 大坂なおみリミテッドエディション」を着用することができませんでした。
グランドスラムの試合中、選手は誰ともコミュニケーションを取ることを許されていません。同モデルはスマートウォッチなので、その通信機能が大会ルールに抵触してしまったのです。
タグ・ホイヤー社にとっては絶好の宣伝機会を逃したことになります。
「私たちは懸命に努力しましたが、大阪選手がプロテニスの大会に出場する間は、通信機能がついた時計を着用してもらうことはできません」と同社CEOのフレデリック・アルノー氏がインタビューで語っています(*1)。
*1. NAOMI OSAKA PREVENTED FROM WEARING NEW TAG HEUER WATCH ON COURT
https://www.tennis.com/baseline/articles/naomi-osaka-prevented-from-wearing-connected-tag-heuer-watch-on-court
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他にもあるスポーツ競技でコミュニケーションが禁止される例
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元々、大阪選手とコミュニケーションを禁止するルールには因縁のようなものがあります。
初のグランドスラム優勝を果たした2018年全米オープンの決勝戦で、対戦相手のセリーナ・ウィリアムズ選手が観客席のコーチから助言を受けたとして、審判から警告を受けました。ウィリアムズ選手はそれを不満としてラケットを地面に叩きつけてポイント・ペナルティー、さらに審判に暴言を吐いてゲーム・ペナルティーを科されました。
今年の全豪オープンではステファノス・チチパス選手が観客席の父親から母国語のギリシャ語で助言を受けているとして、ペナルティーを科されています。
このようなルールが存在する以上は、通信機能がますます充実しているスマートウォッチの利便性がかえってあだになってしまいます。
テニスだけではなく、他のスポーツでも似たような例があります。陸上100m走で日本人史上初9秒台を記録した桐生祥秀選手はApple Watchの愛用者として知られていますが、昨年からレース中に着用できなくなりました。
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2020年のメジャーリーグを揺るがしたヒューストン・アストロズのサイン盗み疑惑では、電子機器の他にバケツを叩いて打者にサインを伝達するという原始的な方法が取られました。通信機能がついた腕時計を使えば、もっと「スマート」に不正ができてしまうでしょう。
スマートウォッチは便利ですが、腕時計ではなく通信デバイスとみなされるようです。今後は入試など様々な分野で規制の対象になるかもしれませんね。
●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookは https://www.facebook.com/WriterKakutani
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