モノを大切に扱う日本の文化
私は日本よりアメリカに住んでいる年数の方がはるかに長い在米日本人なのですが、日本に帰国するとき、最初にくぐり抜ける関門が入国審査場です。
そこではよく「パスポートのカバーは外してください」という意味の注意書きを目にします。たしか、成田空港でも羽田空港でも関西空港でも見たような気がします。
私はここで、「ああ日本に帰って来たなあ」としみじみと実感することになります。
アメリカにもパスポートのカバーは売っていますが、それを実際に使っている人を見た記憶がまったくないからです。
もちろん、私が見たことがないだけで、パスポートにカバーをつけるアメリカ人もどこかにはいるのでしょうが(何しろそのための商品が販売されているわけですから)、少なくとも日本人と比べるとその数ははるかに少ないのではないかと想像できます。
パスポートに限らず、一般的にアメリカ人はカバーとかケースのようなものをあまり使いません。本屋のレジで「カバーをおつけしますか?」と尋ねられることはありませんし、どの家庭を訪問しても便座カバーをつけている家は見たことがありません。
私が日常的に接しているのは高校の野球少年たちですが、彼らはバットをむき出しで運び、試合中はその辺りに放り投げています。かのイチロー氏はバットを専用ケースに入れて大切に扱っているという話がニューヨーク・タイムズ紙で取り上げられたことがありました(*1)。
日本人からするとバットをケースに入れることは奇異でもなんでもありませんが、アメリカ人にとっては驚くべきエピソードだったようです。
スマホケースは例外か?
ベンチの上に置きざらしになったスマホはアメリカでよく見る光景。ケースで保護されているにもかかわらず、スクリーンにヒビが入っている。
そんなアメリカ人でもスマホだけはケースをつけている人が多いようです。周りを見渡してみても、ほとんどの人がスマホケースを使っているようです。
スマホをむき出しで持ち歩いている人が絶無というわけではありませんが、かなり少数派なのではないでしょうか。
量販店やデパートなどのスマホ売り場でも、スマホケースはかなりのスペースを占めて並べられています。
ある量販店のスマホケース売り場
ためしに私が指導する高校野球部員たちに、まるで持ち物検査のように、「スマホを見せてみろ」と聞いて回ってみました。
すると10数人以上の全員がスマホにケースを付けていました。
それとは別に、大学生の息子にも尋ねてみましたが、友人たちのほとんどがスマホケースを使っているそうです。
これではあまりにもサンプル数が少ないので、グーグル検索をしてみました。
「米国人の何パーセントがスマホケースを使っているか?」(What percentage of Americans use smartphone cases?) ― そんな疑問でもヒットするページがあります。まことに便利な世の中です。
『Statista』という市場調査会社のサイト上に公表されているレポート(*2)によると、アメリカ人の79%はスマホケースを使用しているそうです。調査が行われたのは2017年の2月6~8日、米国内に住む13歳以上の1,455人から回答を得たと言うことです。
この調査結果にどれだけの信憑性があるかどうかは分かりませんが、私の実感からはそれほどかけ離れていません。
むしろ、それよりもっと多くの人がスマホケースを使っているのではないかと思います。上記の調査結果に使われたのは約5年前のデータですので、現在のスマホケース使用率はもっと上がっているのではないでしょうか。90%以上だとしても、少なくとも私は驚きません。
日本人とアメリカ人の行動パターンは似てきているのか?
それでは日本の事情はどうなのでしょうか? ちなみに上の疑問を日本語に変えて、グーグル検索(「日本人の何パーセントがスマホケースを使っているか?」)してみると、トップに『LINEリサーチ』のレポート(*3)がヒットしました。
こちらの調査はやや新しく、2021年12月7日~8日までの間に日本全国の15歳~59歳の男女から5,252の有効回答を得たということです。
このレポートの結論によると、日本人の90%以上はスマホケースを使っています。どうやらスマホケースを使用することに関しては日本人とアメリカ人の間で大きな違いはないようです。
年代によって微妙に異なるスマホケースの目的
LINEリサーチのレポートで1つ私が目を引かれたことは、日本では7%の少数派であるスマホケース不使用者ですが、その中では若い(10~30代)の男性の割合が他の年代と比べてやや高いということでした。
私の個人的な感覚からすると、これは意外な結果です。
「アメリカでは日本とは反対に、年代が高い層にスマホケース未使用者が多いのではないか」と思うからです。
私が周りの高校生と大学生に聞いて回った結果が示すように、アメリカでは若い世代ほどスマホケースを使っているのではないでしょうか。それがいわば流行であり、流行に乗り遅れた層がスマホケースを使っていないような気がするのです。
アメリカではiPhoneの使用者はアンドロイド系より年齢層が高い。ケースもやや地味か。
かく言う私は間違いなく年代が高いグループに入りますが、スマホを使い始めた最初の数年はむき出しで持ち歩いていました。
ところが、スマホを落としてスクリーンを割ってしまい、高い修理代を払うという手痛い経験を2回も繰り返し、それ以降は必ずスマホはケースに入れるようにしています。
私のようなおっちょこちょいとは違い、慎重な行動を取る立派な大人の方々は、スマホを落とすなんてことはなく、ケースも不要なのでしょう。
スマホの修理を請け合うショップの看板。その需要は高い
スマホケースを使用する目的にはスマホ本体を物理的に保護することに加えて、おしゃれとか個別化をしたいという気持ちがあると思いますが、アメリカでは高齢者が前者の目的を重視して、若い世代は後者か両方の目的を見出している。そんな気がします。
日本でスマホケースを使わない若い男性たちはひょっとしたらそちらの方が格好いいと考えておられるのかもしれませんね。
*1. For Suzuki, Respect for Bats Is Key to Hitting https://www.nytimes.com/2012/09/25/sports/baseball/for-ichiro-suzuki-respect-for-bats-is-key-to-hitting.html
*2. Do you use a protective case for your smartphone?https://www.statista.com/statistics/368627/us-protective-case-usage-among-smartphone-owners/
*3. 【LINEリサーチ】9割以上の人がふだんスマホケースを使用、使っているケースのタイプは「手帳型ケース」「ソフトケース」がTOP2https://www.jiji.com/jc/article?k=000003580.000001594&g=prt
●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookはhttps://www.facebook.com/WriterKakutani
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