トライアスロンの起源は好奇心?
トライアスロンは2000年のシドニーオリンピックで初めてオリンピック正式種目になりました。比較的、歴史の新しいスポーツです。
それよりずっと以前から、水泳、自転車、ランニングを連続して行うレースは行われていましたが、距離も順番もまちまちでした。1974年にカリフォルニア州サンディエゴで開催された大会が、初めてこの種のレースに「トライアスロン」という名称を与えました。
もっとも、オリンピック競技になる前、トライアスロンはその1種類である「Ironman」(鉄人レース)の方が世間に広く知られていました。1978年にハワイのオアフ島で初めて開催されたこのレースは、水泳3.8km、自転車180km、ラン42.195kmというとんでもないもので、現在でももっとも有名な耐久系スポーツの1つとして続いています。
最初のIronmanレース開催を呼び掛けたのは米国海軍司令官のジョン・コリン氏です。それ以前からオアフ島では「ワイキキ2.4マイル・ラフウォータースイム」(水泳)、「アラウンド・オアフ 112マイル・バイクレース」(自転車)、そして「ホノルル・マラソン」(ラン)という3種類の耐久系レースが別々に行われていました。この3つのうち、どれがもっとも過酷なのか? コリン氏のそんな好奇心が元々の始まりだったという伝説があります。
鉄人ではなくてもできる「オリンピック・ディスタンス」
現在もっとも標準的だとされるトライアスロンは、水泳1.5km、自転車40km、ラン10kmのショート・ディスタンスです。オリンピック競技でも採用されていて、オリンピック・ディスタンスとも呼ばれています。
もちろん、この距離でも大変なことには違いはありませんが、一般人でもトレーニングを積めば、なんとか挑戦できる程度ではあります。
コリン氏ほど過激ではなくても、私にも同じような好奇心はあります。水泳、自転車、ランのうち、一体どれが一番きついでしょうか?
そこでオリンピック・ディスタンスのトライアスロンを実際にやってみて、Fitbit Charge 5に記録された心拍数や消費カロリーを比較してみました。
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とはいっても、本当のレースに出場したわけではなく、実験はすべて屋内ジム(25mプール、エアロバイク、トレッドミル)で行いました。
「天候などの他要因を排除し、距離を正確に計測し、実験データの精度を高めるため」というのが建前ですが、「もう冬だし、寒い中を泳ぐのはつらいなあ」と思ったのが屋内を選んだ本当の理由です。
水泳1.5㎞ (25mプール30往復)
まずは水泳1.5㎞。25メートルを30往復すると、ちょうどその距離になります。Fitbitで水泳の記録を取るためには、まず設定でプールの長さを入力する必要があります(*1)。つまり、本当のトライアスロンのように海で泳ぐようなケースはFitbitではデータを計測できないようです。
*1. Fitbit デバイスでスイミングを記録するにはどうすればいいですか?
https://help.fitbit.com/articles/ja/Help_article/2087.htm?Highlight=%E6%B0%B4%E6%B3%B3
プールに入り、Fitbitでエクササイズから「水泳」を選び、開始ボタンを押して、泳ぎ始めます。後はひたすらプールを往復すると、Fitbitが泳いだ距離とタイムを記録してくれます。
結果タイムは44分31秒で、消費カロリーは253kcalと出ました。泳いだ距離はきっちり1500メートルとなっていますが、これはもちろんプールの長さを25メートルとあらかじめ設定したからだと思います。腕の動きなのか、泳ぐ方向なのか、Fitbitがどのようにして往復回数を把握しているのかは私には分かりませんが、どうやらデータは正確に計測されているようです。
私の水泳は完全に自己流のクロールです。ただの体力任せで、きれいにも速くも泳げません。無駄な動きが多いせいだと思うのですが、これだけ泳ぐと早くも息が絶え絶えになりました。
従って、Fitbitが示す消費カロリーの数値はあまりにも低すぎると私には感じてしまいます。
なお、これも理由が私には分からないのですが、水泳中の心拍数をFitbitは把握できないのだそうです。
自転車40㎞ (エアロバイク)
プールから上がり、更衣室でTシャツ・半ズボンのいつもの服装に着替え、エアロバイクのコーナーに向かいます。
Fitbitではエクササイズの種類で通常の自転車とエアロバイクが別に選択できるようになっています。当然のことですが、エアロバイクの場合はGPS機能は使われません。走行距離はFitbitではなく、エアロバイクのモニター表示で判断しました。
屋内ですので、坂も空気抵抗もありません。ペダルの重さかペースを無理に上げない限り、運動としては非常に楽なはずです。
しかし、ただひたすら同じ姿勢でペダルを漕ぎ続けるのは心理的にはかなりきついものでした。私が飽きっぽい性格であることも大いに関係しているとは思いますが、「なんでこんなことやっているのだろう」「もう辞めちゃおうか」という悪魔の誘惑に何回も負けそうになりました。
結果タイムは2時間10分11秒で、消費カロリーは686kcalと出ました。どちらも水泳の約3倍ですね。
体感と大きく異なったのは心拍数でした。平均119bpm(毎分拍)はそれくらいかなと思いますが、グラフを見ると、数値がかなり上下しています。最高では198 bpmに達した瞬間もあるとのことですが、どう考えてもそれほど苦しかった記憶はありません。何しろ、一般的な最大心拍数の推定値(220-年齢)を用いれば、私のそれは166bpmなのです。
このあたり、私の感覚が間違っているのか、Fitbitの心拍数計測が間違っているのかは分かりません。
ラン10㎞ (トレッドミル)
長くサドルに跨っていたせいで、お尻が痛み、腰や背中が固まってしまいました。ただ、事前に心配していたほどには脚は重くなりませんでした。
トレッドミルに移動し、走り始めました。エアロバイクと同様に、Fitbitではエクササイズの種類で通常のランとトレッドミルを別に選択できるようになっています。GPS機能が使われないことも、走行距離はトレッドミル自体のモニターで確認したことも同じです。
トレッドミルにも空気抵抗はありません。坂の角度は選べるようになっていますが、今回はずっと平坦にしました。ペースは普段のジョグより少し遅いくらいに抑えました。
トライアスロンの中では、ランは私がもっとも得意とする種目です。10㎞をそれくらいのペースで走るのは、いつもなら文字通り朝飯前なのですが、さすがに水泳と自転車を終えた後で、それを行うのはきついものがありました。何しろ、走り始めた時点で、運動を開始してから3時間以上が経過しているのです。フルマラソンに例えるとすれば、30キロを越えたようなものでしょうか。
結果タイムは1時間12分07秒、消費カロリーは768kcalでした。所要時間は自転車の約半分にもかかわらず、消費カロリーはかえって多くなっています。
トレッドミルのモニターで10kmちょうどを示したときに走り終えたのですが、Fitbitでは走行距離を11.13㎞と表示されました。どちらが正しいかは分かりませんが、私の体感では10kmの方が実際に近いような気がします。
心拍数グラフの数値も、私の疲労感を表わしていました。ゆっくりとしたペースで走っているにもかかわらず、走り始めから最後まで、私の心拍数はずっとピークゾーンになっていたのです。
フルマラソンと同等のカロリーを消費していた
距離 (km) | タイム(分) | カロリー
(kcal) |
カロリー /分 | |
水泳 | 1.5 | 44 | 253 | 6 |
エアロバイク | 40 | 130 | 686 | 5 |
トレッドミル | 11.13 | 72 | 768 | 11 |
合計 | 52.63 | 246 | 1707 |
合計所要時間は約4時間、消費カロリーは約1700kcal。私としては、フルマラソンを完走すると、大体それくらいになります。
オリンピック・ディスタンスのトライアスロンはフルマラソンを走るのと同じ程度に疲れる、が個人的な感想です。
3種目のうち、どれが一番きついか?という最初の疑問への私自身の答えは、体力的には水泳、心理的には自転車、順番からするとラン、ということになります。もちろん、その人の性格や何を得意とするかによって、この答えは異なってくると思います。体力と時間に余裕がある人は、一度試してみてはいかがでしょうか?
●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookは https://www.facebook.com/WriterKakutani
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