米国マサチューセッツ州ボストンに本社を置くWHOOP社が、自社のウェアラブル製品の新バージョン『WHOOP 4.0』を発表しました。
WHOOPはアスリートに特化したフィットネス・トラッカーという位置づけのウェアラブル製品。
24時間装着することで心拍数の変動、安静時の心拍数、呼吸数、睡眠などのデータをアプリで把握することが可能です。
今回の新バージョンでは、前バージョン(3.0)よりサイズが33%小さくなりました
photosource:whoop.com
画面も時計もないフィットネス・トラッカー
WHOOPはアスリートに特化したフィットネス・トラッカーという位置づけで、スマートウォッチとは呼べません。
腕時計のように手首に巻きますが、なにしろ画面がついていないのです。
従って、時間を目で確認することも、メッセージを受け取ることも、決済をすることもできません。言わば、センサーが付いたリストバンドのようなものです。
Apple WatchやFitbitといったスマートウォッチのユーザーの中には、運動や健康に関するデータのみを必要として、他の機能にはあまり興味がない層も一定数います。
実を言えば、筆者もその1人です。
そのような人たちには、WHOOPのようなフィットネス・トラッカーがアピールするわけです。機能を絞った分だけ、軽量で価格が安くなるのも魅力です。
WHOOPはサブスク型で端末は無料
Meet the all-new WHOOP 4.0.
Smaller. Smarter. Even more advanced.
Reserve your WHOOP 4.0 today at https://t.co/kHU0bG9BL7. #UnlockYourself pic.twitter.com/MJpMSN49AK
— WHOOP (@whoop) September 8, 2021
WHOOPはなかでもユニークな販売形態を採用しています。
いわゆるサブスクリプション方式で、ユーザーは月々の利用料を払う代わりに、ハードウェアは無料で受け取る仕組みです。
前バージョンから契約しているメンバーには、今回の新バージョンのハードウェアも無料で送られてきます。
2021年9月現在、月ごとの会費は30ドル(約3300円)。12か月、あるいは18か月で長期契約すると、月会費はそれぞれ24ドル(約2600円)、18ドル(約2000円)と安くなっていきます(*1)。
*1. WHOOP社ホームページ:https://www.whoop.com/membership/pricing/
未来を変える新世代バッテリー世界初の商品化
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ニッチな分野で評判はあるものの、今のところWHOOPの一般的な知名度はそれほど高いとは言えません。
新バージョンのトラッキング機能も、他社製品が提供するものと比較して、さほど目新しいものでもありません。
それにもかかわらず、テクノロジー関係のウェブサイトはもちろんのこと、Forbes(*2)のような米国を代表する大手メディアの多くまでもがWHOOP4.0の発表を記事に取りあげました。
その理由はWHOOP4.0に使用されている画期的なバッテリーにあります。
シリコンバレーに本社を置くSila Nanotechnology社(以後、シラ社)が開発した技術を用いた新世代バッテリーは、従来のリチウムイオン・バッテリーより小さなサイズではるかに長持ちするということです。
正確には、バッテリーに使われる専用の「シリコン・ナノ粒子」をシラ社がバッテリー・メーカーに提供したとのことですが、何はともあれ、この技術を初めて商品化製品に利用したのがWHOOP4.0なのです。
Today marks the most significant #battery innovation in market in 30 years. Now commercially available in @whoop 4.0, Sila has the ability to unlock innovations in consumer product design, EV, and renewable energy. Learn more in @nytimes: https://t.co/F7vQ7b2bZA
— Sila Nano (@SilaNanotech) September 8, 2021
結果として、WHOOP4.0は大幅なサイズ縮小に成功し、バッテリーをフル充電してから5日間連続で使用可能としています。
シラ社の創業者兼社長であるジーン・ベルディチェフスキー氏は元々電気自動車大手テスラ社のエンジニア出身。
2025年までにこの技術の電気自動車への供給を開始する目標を掲げています。
わが国でも菅首相が2030年までに温室効果ガス排出を46%削減する目標を表明したように、電気自動車のさらなる普及は持続可能な地球環境を守るための世界的な課題とも言えます。
WHOOP4.0で初めて試されるバッテリー技術もそれに一役買うとすれば、何やら視界が大きく開けたような気持ちになるのは筆者だけではないでしょう。
●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookは https://www.facebook.com/WriterKakutani
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