リモートワークが常態化し、医療を取り巻く環境も変化している中で、社員や従業員が日常における自分の状態に関して把握することが、重要になってきます。
そんななかで、医療・製薬関連をはじめとする研究機関向けに、特にメンタル不調や精神疾患専用の医療データ分析SaaS「SelfBase(セルフベース)」を提供するテックドクター社が、興味深い取り組みを行っていたので、本記事で紹介します。
Fitbitから取得したデータを分析してストレスや睡眠に関するスコアを可視化
テックドクター社は、ウェアラブルデバイスであるFitbitから取得したデータを分析し、ストレスや睡眠に関するスコアを可視化する独自の取り組みを開始しました。また、本取り組みが社員の健康意識の向上と行動変容を促すことをを確認し、外部の企業様でも活用可能なフォーマットを作成・公開しています。
テックドクター社の取り組みの概要
- TechDoctorではウェアラブルデバイスであるFitbitから脈拍/睡眠/運動データを取得して毎週平日にそれぞれのスコアを可視化させる社内検証を2021年4月から開始
- 社内検証では被験者15名をランキング形式で比較を行い毎週ランキングの変動を見ながら自分の健康意識の向上を図った
- 5月より各曜日ごとに同じランキングを毎週出しただしそれぞれを毎日「面白い/役立つ/わかりやすい」の3項目をそれぞれ5点満点で採点
検証概要
【参加人数】15名(男性13名 女性2名)
【期間】2021年4月1日~現在継続中
【内容】
ウェアラブルデバイスfitbitより取得したデータを用いて数値の可視化
可視化されたものを参加者が3つの観点から評価の実施し見やすいデザインの発見
【データ】
運動データ:歩数/消費カロリー/各種運動時間
睡眠データ:睡眠時間/入眠・起床時間/各種睡眠ステージ割合/睡眠効率
脈拍データ:安静時心拍数(脈拍から推測)/時間ごとの脈拍数 / 独自に算出した指数等
「ストレス状態の見える化」検証結果
上記概要に沿って、約1ヶ月半、本人同意を得た15名を対象にFitbitを配布し取組みを行いました。
取組みは4月上旬に取組みを開始し、fitbitから取得できるデータをAPIを通じて認証を行い取得し解析。当社解析用プロダクトSelfBaseを活用して、取得したデータから様々な本人へのフィードバックをSlack上にて実施しました。フィードバックは下記のような「自分の状態を知る」ことができる内容をカード形式でまとめて平日昼頃に毎日伝える形で行われました。
また、Fitbitから取得できる脈拍データを用いて副交感神経の優位度を算出しストレスフリー度として時系列における自分の変化をカードとして表示するなど工夫を行い、その都度、それに対しての参加者側の反応数なども定量化。「時間帯ごとで自分がいつストレスを感じやすいか」「他の参加者と比較した時に自分の特徴がどこにあるか」などのフィードバック内容や見せ方ごとでも反応の評価を行いました。
(ストレスフリー度とは相対的な副交感神経の優位度合い。数値が高くなるほどストレスなく過ごすことができていることを表しており、低いほどストレスが高い状態であることを示す。)
ストレス関連レポートを中心に、睡眠や運動などのレポートも曜日ごとに配信しました。
行動変容の事例
下記は参加者の一人である弊社社員のストレスフリーランキングの5月の推移を示しており、この取組を通じて改善が行われたことが確認できました。最初の1,2週間目では10位と社内15人の中でも下の方であったが3,4週目には3,2位と改善されました。
Aさんが意識したことは以下
- 朝に脈拍数を高めるとその日1日負荷がかかってしまうので朝に行っていたランニングを夕方にした
- 寝る時間をそろえることで睡眠時間のばらつきを無くすことを意識した
- 意識的にミーティングとミーティングの間を開けて連続したミーティングを避けた
今回紹介したストレスフリー度 以外にも様々なランキングやFitbitアプリに表示されているデータを見ながら自分の習慣を見直してランキングを向上させることに成功したと考えられます。
また、取り組みを行ったチーム内では、睡眠や運動などに関して意見がかわされ、お互いにアドバイスをするなどコミュニケーションにおける健康に関しての話題も増え、健康意識の高まりが確認できました。
今後の展開について
1ヶ月半にわたって、データを可視化し個人にフィードバックすることで、個人の日々の生活における特徴などを可視化することをデータの解析とビジュアライゼーションを組み合わせることで、参加者が自分自身に気づきをもたらす事を実現しました。また、一部の参加者では約1ヶ月程度で行動変容し改善することも確認できました。
今後、さらにデータの解析を進め、より効果的なアウトプットを行っていくとともに、継続的な行動変容が起こるかを継続的に確認を進め、約4ヶ月後での効果の成果をまとめる予定です。
デジタルヘルス活用の意義
日々の生活におけるストレスは、人によっては自分では気がつくのが難しいこともあり、社会情勢の変化の中で自分のリズムが崩れたり、他人とのコミュニケーションの機会が減るなどの状況から、よりストレスを抱え込む傾向があると考えられます。
海外においても、デジタルヘルスの取り組みは様々な分野において進んでおり、ストレスの状態把握にも有意義です。Fitbit等は医療機器等ではありませんが、それらから得られるデータは、本来のストレスの状態を確実に知ることはできないものの、状態の変化を捉えるためには活用可能であるということを取り組みから確認したいと考えております。
テックドクター社社は引き続きコロナ禍で社会が変化していくなかで、実生活内での活用方法を進め、人々が自分自身の状態を確認する方法として確立し、社会全体のレジリエンスが向上できるよう取り組んでいくとのことです。
株式会社Tech Doctor
https://www.technology-doctor.com/