日本中でブームになっている登山。どんどん増え続けるクライマーの中で今注目を集めているのが、GPSでナビしてくれたり、心拍やペースを計測してくれたりする高性能なスマートウォッチなんです。
そこで、『Garmin』『CASIO PROTREK』『SUUNTO』の3大アウトドアブランドから、フラッグシップモデルを実際に登山に持ち込みガチ比較を決行。一番使えるモデルははたしてどれだ!?
登山向けのスマートウォッチってなに?
比較検証に移る前に、登山用スマートウォッチとは何か簡単に説明しておきましょう。登山向けのスマートウォッチには、一般的なスマートウォッチでもおなじみの心拍計測や歩数、移動距離、消費カロリーに加え、クライミングに特化した機能を搭載しています。
例えば気圧計。気圧計で気圧の変化を計測し標高を表示したり、簡単な天気予報も行うことが可能なモデルもあります。また、GPSを利用したナビゲーション機能も登山ウォッチの大きな特徴のひとつ。登山ルートをウォッチの中にあらかじめ入れておけば、腕元でナビゲーションしてくれ、ルートから外れるとすぐに警告してくれます。万が一遭難してしまったときは座標をすぐに読み取れるモードも存在したり、日の出日の入りや登頂ペース表示など、登山者がほしいと思っていた機能の多くを搭載しているのが、登山用スマートウォッチなのです。
登山におすすめのスマートウォッチ12選【2021年最新版】GPSや高度計・気圧計搭載のモデルも多数!
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ガチ対決エントリーモデルはこの3本!
それでは今回のガチ対決にエントリーした3モデルを紹介していきましょう。
エントリー①
GARMIN
Fenix 6 Pro Dual Power
ガーミン フェニックス6 プロ デュアル パワー
最上位シリーズのマルチスポーツGPSウォッチ
複数の衛星システムを活用した正確なナビシステム、高精度な光学式心拍計、ソーラー充電機能など、アウトドアで役立つ機能が満載。チタン合金も使った重厚感あふれるデザインで、Suicaにも対応と、ビジネスシーンでも機能美と洗練されたスタイルが映える1本です。
Fenix 6 Pro Dual Power Slate Gray DLC / Black
エントリー②
CASIO PRO TREK
PRO TREK SMART
カシオ プロトレック スマート
Wear OS搭載! カラー地図表示のGPSウォッチ
CASIOの本格アウトドア腕時計シリーズ「PRO TREK」から登場した、GPS搭載スマートアウトドアウオッチ。Wear OS by Googleを搭載しており、多彩なアプリを追加可能。電波圏外でも現在地が表示されるカラー地図など、アウトドアで役立つ機能を多く備えています。
PRO TREK Smart WSD-F30
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エントリー③
SUUNTO
SUUNTO 9 Baro
スント スント 9 バロ
最大120時間の運動追跡!タフネスGPSウォッチ
SUUNTOのマルチスポーツ対応GPSウォッチのフラッグシップ機。強靭なボディには気圧高度計測機能や、GPS記録オンの状態でも120時間までエクササイズを記録できるロングバッテリーを搭載。長時間の過酷な屋外トレーニングやレースでも抜群の力を発揮します。
SUUNTO 9 BARO Titanium
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【あわせて読みたい】
上記のモデルほか、Garmin、SUUNTO、CASIOでは登山やアウトドア向けのスマートウォッチが多数リリースされています。
主要なモデルは、下記の各ブランドのモデル比較記事で紹介していますので、気になる方はこちらもチェックを!
Round1 登山データ対決
登山の最中は「天気」「標高」「日没の時刻」といった山の情報や、「心拍数」「ルート上の位置や進んだ距離」など、自分自身の情報を正確に把握することが非常に大切。対決企画第1回は、エントリーした3つのスマートウォッチがユーザーにどんな情報を与えてくれるのか比較します。
GARMIN
心拍数や1時間毎の天気など表示項目の多彩さは圧巻!
まずは『Garmin』から。最上位シリーズのマルチスポーツGPSウォッチだけあり、表示できる情報の多彩さは圧巻と言えるもの。下で紹介したもの以外でも、身体に蓄えているエネルギーを表す「BODY BATTERY」や、暑さと高度変化に対応した「VO2 max」も表示可能。水分補給の必要性を通知する機能もあります。
CASIO PRO TREK
高精細なカラーの表示で多彩な情報を把握可能
多彩な情報を高精細に表現。方角やゴールまでの残り高度を確認する機能など、登山で役立つ機能も多数搭載されています。Wear OS by Googleを搭載しているため、アプリストアから天気アプリなどを追加も可能。心拍計はPRO TREK SmartのWSD-F21HRのみ搭載しています。
SUUNTO
登山に必要な各種情報をシンプルかつ的確に表示
液体封入式コンパスからスタートした北欧のメーカーらしく、表示される山の情報はシンプルかつ的確。高度や気圧から、自身の心拍数まで、必要な情報を高い視認性で確認可能です。バージョンアップで追加された「SuuntoPlus」によって登山関連の機能はより充実した状態となりました。
情報量の多さはさすがフラッグシップモデル!
正直なところ、ガチガチのクライマーでない趣味登山家ではすべての機能を使えこなせないほど多機能な3モデル。スペック的にはどれを買っても満足できますが、やはりブランドごとに個性はちゃんと存在します。心拍やペースなど、登山中の活動データを重視するなら、スマホアプリの使い勝手も含めると『Garmin』が一歩リードしている印象。また、チタン合金を使った大人っぽいルックスも魅力と言えます。
『PRO TREK』は、WearOSを搭載しているだけあって、さまざまなアプリをインストール可能でm3モデルの中では一番リッチな画面表示が魅力。汎用性では一番でしょう。『SUUNTO』がとにかく優等生。登山家が求めるすべての機能を高いレベルで実装し、まったくスキがありません。画面表示は少し暗いですが、これはバッテリーとトレードオフ。登山中はとにかく絶対に電池を切らさないという開発者の決意が垣間見え、逆にプロの持ち物感満々です! 続いては「ナビゲーション対決」です。
Round2 ナビゲーション対決
最近は登山中の地図もスマホで見る人が多いですが、スマートウォッチならスマホ以上に素早く地図や現在地、方角を確認可能です。この3機種はその精度もかなり高いので、登山中にスマホや紙の地図を出す回数はグッと減るはずです。
GARMIN
カラーの地図は視認性◎コースからの逸脱も通知
カラーの地図は非常に見やすく、複数の衛星システム(GPS、GLONASS、Galileo)にアクセスして割り出される現在地はかなり正確です。専用アプリ「Garmin Connect」のブラウザ版では事前のルート登録も簡単に行えます。事前に登録しておけば登山中のルートの把握は非常に楽になるはずです。
CASIO PRO TREK
登山向け地図もカラーで表示、オフラインでの使用も可能
世界各国の地図情報を提供する Mapbox社との提携により、事前にダウンロードしておいた地図はオフラインでも使用が可能。また携帯の電波が届かない山の中でも、現在位置がわかる登山者向け国内人気アプリ「YAMAP」もダウンロード可能。登山地図上で現在地が分かるのが非常に便利です。
SUUNTO
シンプルゆえ使いやすい!頼れるマップとナビの機能
スマートフォンのSUUNTOアプリで作成or取り込んだルートをディスプレイ上に表示可能。マップはシンプルに線のみが表示されるものだが、それゆえ非常に見やすいのが特徴です。ルートを外れたときに即座に警告が届くのも非常に心強いです。
びっくりするほど実用的!ナビ機能は登山家に必須になる!!
どのモデルもGPSによる現在地表示はかなり正確で実用的でした。とくに、『Garmin』はGPSメーカーだけあり、電波を高速で捉えることができます。とは言え、ほかの2機種もかなり良好です。
WearOSを搭載する『PRO TREK』は自分好みの地図アプリをインストールできるのが魅力。ただ、消費電力の多いWearOSでは、ナビを起動しているとバッテリーは2日と持たないので、複数日以上に渡る登山が多い人は、ソーラー充電ができる『Garmin』やバッテリーコントロールに定評がある『SUUNTO』を選ぶといいでしょう。
『SUUNTO』はナビ画面がかなりシンプルで、リッチさという意味では一歩劣りますが、設定したルートを外れたときの警告がかなり早いことが魅力。実際の登山ではかなり実用的でした。
Round3 独自機能&アプリ対決
音声入力、ソーラー充電、Suica搭載、圧巻のロングバッテリー……。この3モデルのスマートウォッチは、それ1つで購入の決め手になるような独自機能をそれぞれが備えています。今回はそんな独自機能をモデルごとに徹底比較。また、登山の詳細なログを記録でき、アプリで確認したりアプリで登山前にルート作成もできたりするのもスマートウォッチの魅力ですが、独自機能と並行してアプリの使い勝手も対決していきます!
GARMIN
Suica搭載にソーラー充電魅惑の独自機能が揃う
マルチスポーツGPSウォッチの最上位モデルの本機には、2020年からGarminが対応をスタートしたSuicaをはじめ、うれしい独自機能が複数。バッテリーの持ちもよくビジネスシーンの使用にも向いています。また、登山のログはGarminのアプリ「Garmin Connect」で確認可能。時間、距離、消費カロリー、平均心拍数などのデータも表示されます。ブラウザ版のアプリは事前のルート作成に便利です。
CASIO PRO TREK
Wear OS by Google搭載で拡張性の大きさが強みに
Wear OS by Googleを搭載している本モデルは、サードパーティのアプリを追加可能なのが大きな魅力。登山以外のシーンで活躍する機能も多いので、普段使いを想定している人も注目です。Googleのサービスやサードパーティのアプリとの連携がいいのが本モデルの特徴。移動した経路をGoogle Earthで振り返れる機能は特に楽しいです。
SUUNTO
GPSをオンにした状態でもバッテリーは120時間稼働!
アウトドアのアクティビティに使える機能を豊富に揃えつつも、バッテリーの持ちが非常にいいのがこのモデルの特徴。過酷な環境下にも耐えうる強度と耐久性も大きな魅力といえます。時計のディスプレイ上の表示はシンプルなSUUNTO 9ですが、登山後にログを見ると、残されたデータの詳細さに驚くはず。アプリ上でのルート作成や取り込みも慣れればとても簡単です。
登山の実力は伯仲するもそれぞれ個性豊か
今回エントリーした3モデルは、各ブランドのフラッグシップだけあって、登山のパートナーとしてどれもおすすめできるもの。どれを買うか迷ったら独自機能が決め手になるかもしれません。
『Garmin』はなんと言ってもソーラー充電がウリ。常に充電切れが気になるスマートウォッチですが、最大80時間のバッテリーライフは非常に心強い存在です。さらにSuicaによるキャッシュレス決済ができるのも『Garmin』の強みでしょう。登山だけではなく普段でも使えるようなスタイリッシュなルックスですが、キャッシュレス決済の搭載で、ますますデイリーユースで役立つ1本となっています。アプリの出来も秀逸で登山の準備や登山後のデータ管理もまったくストレスを感じさせません。
カスタマイズ好きや新しもの好きには『PRO TREK』がおすすめです。『PRO TREK』は「Wear OS」を搭載しているので、好きなアプリをダウンロードできますし、音声アシスタントも使用できます。インストールしたアプリによって、登山ウォッチとはまったく別の用途でも使えるのです。OSを開発したGoogleのサービスと綿密に連携できるのもストロングポイント。Google Earthにルートをルートをオーバーレイしたり、登山のスケジュールがGoogleカレンダーに自動登録されたりと便利に使うことが可能です。
『SUUNTO』はこの中では最も登山に特化したストイックな存在と言ってもいいでしょう。地図上の登山ルートをたどりながら、高度と心拍数、速度が分かるアプリの機能は、登山家が自分の実力を測るのに大いに役立ちます。また、事前のルート登録では世界中の山好き『SUUNTO』ユーザーが作成したルートが多数アップデートされており、それをダウンロードすることも可能。登山愛好家のコミュニティーが活用できるのも強みです。機能性ばかりではなく、北欧スタイルのシンプルなデザインも人気で、まさに才色兼備なモデルと言えるのが『SUUNTO』なのです。
Photo/HIROAKI KAWATA
Text/SEIICHIRO FURUSAWA
Model/YUTO TSUJIMOTO